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【誕生秘話】新しい彫刻アートを生み出す ということ ②素人の僕にできること

シャインカーバーのみなさん、こんにちは!

 

アカデミー長 田中淳也です。

 

今日は前回の記事の続きを書きました。

 

はじめての方は、前回の記事から読んでいただけると幸いです。

【誕生秘話】新しい彫刻アートを生み出す ということ ①

 

 

なぜ僕は既存の彫刻アートを好きになれないのか

帰りの電車で僕は浮かれていました。

 

彫刻刀との向き合い方のヒントを見つけることができたからです。

 

現存する彫刻アートを愛することが出来ないのであれば

自分が愛することのできる、新しい彫刻アートを生み出すんだ

 

今思えば、めちゃくちゃ壮大で無礼な目標

 

 

彫刻アートは古代ギリシャの時代から

何千年もずーーっと続いてきた歴史のあるアートのひとつ。

 

 

数多くのアーティストが、様々な方法で彫刻アートで自己表現をしてきました。

 

 

そんなこれまでの素晴らしい彫刻アートに対し、

自分には合わない

と、ポッと出の僕がシャシャリ出て

いきなり自分の彫刻アートを生み出す?

 

 

おこがましいですよね。

 

 

でも、その時はそんなこと微塵にも思っていませんでした

 

 

仕事、家業に対してはじめて自分なりの答えを出せたこと

 

 

この嬉しさに酔いしれていたんだと思います。

 

 

そんなワクワクを胸に抱きながら、岐阜県に帰る新幹線の中でこんなことを考えていました。

 

 

 

どうして僕は今の彫刻アートが好きになれないんだろう。

 

 

 

まあ、答えは前回にも書いた通り、情けないものです。

 

 

・自分には芸術センスがない

・彫刻刀を上手に扱えない

 

 

言ってしまえば、ただの苦手意識です。

 

始めてすらいないモノやコトに対して、苦手意識って最大の敵ですよね。

真剣に取り組んですらいないのに、”自分には出来ない“と諦める。

本当に情けない。

 

 

でも、この時はそんな自分の情けなさをポジティブに捉えることが出来ていました。

 

 

 

どうして僕はこんな苦手意識を持っているんだろう?

 

 

もう少し、その理由を深掘りしてみよう。

 

 

下準備が大変

・立体が苦手

・完成イメージがつかない

完成作品がショボかったらガッカリする

彫刻途中があんまり楽しくない

・すぐ始められない、すぐ終われない

・どこから手をつければいいのかわからない

木の彫り味があまり好きではない

 

 

よくよく考えると、僕は

 

 

パッと始められて、

彫っている時に楽しくて、

サクッと終えられて、

完成度の作品に満足したい

 

 

という欲求を持っているようでした。

 

 

要は

 

 

めんどくさがり

 

 

だったんですね。

 

 

くれぐれも誤解していただきたくないのですが、

既存の彫刻アートは素晴らしいものだと僕は思っています。

 

 

ただ、自分の気質?に合っていないのではないか、という点で深く考えると、

めんどくさがりな自分には合わないのだろうと思い至りました。

 

 

岐阜に帰ってきた後の一週間で僕がした行動。

 

 

それは、後の数年の仕事を、いや、僕の人生をガラッと変える経験を僕に与えてくれました。

 

彫らないモノを彫る、という挑戦

土屋仁応さんの作品に心を打たれてから一週間が経過しようとしていました。

 

 

通常業務に追われながらも、僕は

 

新しい彫刻アートを生み出すこと

 

が頭から離れません。

 

 

寝ても覚めても、彫刻アート。

 

 

娘がおやつとして美味しそうに食べているグミを見て

 

 

これは多分彫れる。

 

 

 

妻が寝る前にハンドクリームを塗っているのを見て

 

 

 

無理だな、これは彫れない。

 

 

 

食物、素材、自然物、金属、生物までも、

目に入るものは全て

 

 

 

彫れるか彫れないか

 

 

 

そんな基準で判断するようにまでなっていました。

ちなみに、今でもこのクセは抜けません。いわゆる職業病でしょう。

皆さんとお話ししている時でも、この記事を書いている時でも、

何か新しいものが目に入ると

瞬時に彫刻刀で彫ることができるかを考えてしまいます。

 

 

 

ネットで

 

“彫刻アート 素材”

“carving art materials”

 

など、世の中に存在する彫刻アート、特に彫刻刀を使ったアートを検索する毎日。

 

 

 

今、世界で彫刻されている素材を使って新しいアートを生み出す方法は無いか・・・

今、彫られている素材で・・・

 

 

 

一生懸命探しても、なかなかいいアイデアなんて浮かんできません。

 

 

 

そんなこと当たり前だろ!

 

 

 

人類の彫刻刀の歴史 vs 一人の人間の7日間の隙間時間

 

 

そう簡単に勝てるわけがない。

 

 

 

そう悟った僕は、考え方を変えました。

 

 

彫刻アートの素人が玄人を出し抜ける可能性があるとしたら

 

 

素人しか思い浮かばないことをすること

 

 

これに尽きる。

 

 

 

じゃあ、

 

 

世の中が彫刻刀で彫らないモノを彫ってみよう

 

 

こんなの普通彫らないよねって芸術家が視界にすら入れないもの

愚直に彫ってみる

泥臭いが、これが素人のできる最善手だ。

 

 

急いで会社を飛び出し、向かった先はイオンでした。

 

マーゴ

僕の故郷である刃物のまち岐阜県関市には

マーゴというイオン系列のモールがあります。

 

僕が中学生ぐらいの頃にOPENしたこの建物。

 

映画館のなかった僕たちのまちに、大型の映画館がやってきた!

 

映画はレンタルビデオか、文化会館(ホール)でたまに上映されるものを観るか

しか選択肢のなかった田舎の人々にとって、マーゴは

 

近代文化をまるごと運んできてくれた

 

存在でした。

 

 

高校卒業以来、僕は東京、米国、中国と様々な都会や田舎の暮らしを経験したのち、故郷に帰ってきました。

 

 

 

でも、何か新しい文化に触れたいと思った時には

 

 

何故かマーゴに行ってしまうんですよね。

 

 

マーゴなら、何かが見つかる

 

 

そんな気がしたんです。

 

 

マーゴに到着した僕は、色んなお店を回りました。

 

文房具、ファンシーショップ、洋服、100均、おもちゃ、家具、ゲーム

 

そこで、予算の許す限りたくさん

 

 

彫れそうなもの

 

 

をカゴに詰め、購入しました。

 

 

用途を無視したモノ選び。

 

 

彫れそうなモノが入っているカゴ。

 

 

 

女性モノのピンクの口紅なんかも入れたと思います。

 

 

 

レジの方はさぞ困惑したことでしょう。

 

 

 

そんなことは全く気にせず、袋いっぱいになった

彫れそうなモノ

たちを抱え、会社に戻りました。

 

ソフビ怪獣”テレスドン”

会社に戻ってからの数時間は、異様な光景だったと思います。

 

 

社長の息子が袋いっぱいのモノを持ってきて

 

 

ウチの彫刻刀であーでもない、こーでもないと言いながらそれらを彫り続ける

 

 

 

しかも、それらは別の用途がある、れっきとしたモノ。

彫刻されるべきモノは何一つありません。

 

 

昨日まで、キッチン用品に熱をあげていたと思っている従業員からみたら

 

 

 

こいつ・・・ついに気が狂ったか!

 

 

 

と感じていたとしても何らおかしくありません。

 

 

 

野球ボール

お風呂マット

お風呂用のジャンプするカエル

光るスーパーボール

口紅

風船

ミニ四駆のタイヤ

握るとストレス発散になる謎のグニャグニャ

 

 

 

20品は試したと思いますが、今となっては試したモノ全てを思い出すことはできません。

 

何故なら、そのほとんどが実際は彫ることができなかったからです。

 

仮に彫れたとしても、

ブツブツ

とした刃切れの悪い彫り跡になったり

ドロドロ

になって原型を留めなくなったり

 

とにかく

彫っていて楽しくもなんともないし、彫り跡も美しくない。

 

 

実は、買う際に”スーパーボール”は楽しく彫れるんじゃないか?

と期待していたんです。

 

でも、ゴムは彫刻刀で彫ることができませんでした。

 

 

試すモノがことごとく彫れない。

 

 

 

やっぱり、そんなに甘くないな

 

 

 

そう思いながら手に取った一体の茶色い怪獣

 

 

中が中空になっている、柔らかな素材。

 

 

こいつもゴムっぽいから彫るだけ無駄かな・・・

 

 

期待していた成果が全然出ていなかったので気分は諦めモード。

 

 

それでも、一応全ての素材を彫ってみよう。

 

 

義春刃物で最も安価な彫刻刀

マルイチ彫刻刀

この小丸刀という刃で、その表面を彫ってみました。

 

 

クニュ。

 

 

これまでにはない、不思議な感覚

 

木よりも軽く、スッと刃が入り

彫り跡がツヤツヤ。

 

 

気付いたら、さっきまで諦めかけていたのが嘘のように、無心でその怪獣を彫刻していました

初めて怪獣を彫った当時の画像

 

一時間ぐらいでしょうか。

 

気付いたら夕方。外は少し薄暗くなっていました。

 

目の前には、もう他に彫る場所がないほど全身彫り尽くされた怪獣

 

本当に、丸刀で適当に彫っただけ。

 

それなのに、

気付いたら僕はこれまでの彫刻人生で一番夢中な時間を過ごしていました

 

彫刻完了後 当時の画像

 

 

彫った感触の良さ

彫り跡のツヤ

 

 

これまでの素材とは比較にならないほどの心地よさ。

 

 

 

ゴムじゃないのか?

 

 

 

一体、この素材は何なんだ

 

PVC

その答えは怪獣が知っていました。

 

彫っている最中は夢中で気付いていませんでしたが、

怪獣の足の裏に

 

PVC

 

と書かれていました。

 

 

急いでグーグル検索。

 

 

ポリ塩化ビニル(ポリえんかビニル、polyvinyl chloride、PVC)または塩化ビニル樹脂とは合成樹脂(プラスチック)の1つで、塩化ビニル(クロロエチレン)の重合反応で得られる高分子化合物である。塩化ビニール塩ビビニールなどと略される。軟質ポリ塩化ビニルは、ソフトビニール(Soft Vinyl)、ソフビとも呼ばれる。しかし「ポリ」または「樹脂」を略した呼称は、その原料である単量体の塩化ビニルと混同するため、単量体の塩化ビニルを特に塩化ビニルモノマー (vinyl chloride monomer, VCM)と呼んで区別している。

Wikipediaより

 

 

PVC、塩ビ、ソフビ、色んな呼ばれ方があるんだな。

 

後から知ったのですが、この怪獣はテレスドンという名前で、ウルトラマンの敵として登場するキャラクターでした。

 

ソフビ人形

 

昔、友達とヒーローごっこをやった時に遊んだおもちゃ。

 

インターネットで検索しても

 

ソフビを彫刻刀で彫る人は見つからない

 

当たり前かもしれません。

 

 

既に形が出来ている、完成している人形にわざわざ彫刻刀で彫るなんて。

 

 

 

普通の人はやりません。

 

 

 

でも、僕が感じたこの高揚感、充実感、満足感はどこから来たんだろう。

 

 

 

楽しい。

 

 

もう少しこのPVCの可能性を知りたい

 

 

 

この直感、無視してはいけない。

 

 

 

続く

 

アカデミー長

田中淳也

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