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【誕生秘話】新しい彫刻アートを生み出す ということ ③輝く異星人

シャインカーバーのみなさん、こんにちは!

 

いつもブログを読んでくださりありがとうございます。嬉しいです。

アカデミー長 田中淳也です。

 

今日は、シャインカービング開発秘話③を書きました。

 

この記事から読み始めても経緯がわかるように概略もつけておきましたが、

興味がある方は前回の記事から読んでいただけると幸いです。

【誕生秘話】新しい彫刻アートを生み出す ということ ①魚が苦手な魚屋二代目

【誕生秘話】新しい彫刻アートを生み出す ということ ②素人の僕にできること

前回までのあらすじ

老舗彫刻刀メーカーの跡取りである筆者(田中淳也)は、自分が彫刻刀を愛いていないことに悩んでいた。その原因が”彫刻アート”自体を愛していないからであると気づくと同時に、既存の彫刻アートではなく、自分が愛することのできる新しい彫刻アートを生み出したい、という思いを強く胸に抱く。(第一話)

様々な”彫られるべきでないモノ”を彫刻刀で彫っていくなかで、ウルトラマン怪獣の彫り心地に感動。光沢のあるその彫り跡はこれまでのどの素材とも異なっていた。素材を調べるとPVC(塩ビ)であることが判明し、自分の直感を信じ、この素材を利用して新しい彫刻アートを生み出そうと決意する。(第二話)

 

おもちゃと彫刻刀

PVCという材質について調べれば調べるほど、僕はその彫刻アートとしての可能性が増していく気がしていました。

 

柔らかく、彫り心地がよく、彫り跡に光沢感がある。

しかも、人形のような複雑な造形を量産できる。

 

複雑な造形、と書くと伝わりづらいかもしれませんが、要は

 

 

自分で形状を作る必要がない

 

 

ということが、僕にとってとても魅力的に感じたんです。

 

 

 

何故なら、僕が仏像をはじめとする立体的な木彫りに強い苦手意識を持っている最も大きな理由が

 

 

 

立体的に木を削って形作ることができない

 

 

 

だったからなんです。

 

 

 

あらかじめ素敵な立体形状が用意されていれば、

あとは彫るだけで自分なりのアレンジができる!

 

 

 

そうだ。

 

 

 

彫るソフビ人形を作ろう。

そして、彫刻刀とセットで販売するんだ。

 

 

 

 

ソフビ人形というおもちゃ

彫るための刃物

 

 

今までに無い組み合わせ。

 

 

 

この可能性、僕の直感が正しいかどうか、どうしても確かめたい。

 

 

 

 

そう決意したその日から、ソフビ人形を作ってくれるメーカーさんを探し始めました。

 

 

 

 

10社ほどに連絡をとり、丁寧に対応してくださった東京都内のメーカーさん一社が

製造を引き受けてくれることに。

 

 

トントン拍子で話が進む中、決まっていない大切な事が。

 

 

 

どんなソフビ人形を作るか。

 

 

とてもとても大切な、キャラクター選び。

 

 

異星人

エイリアンがいい。そうだ、エイリアンにしよう。

 

 

 

とっても唐突に聞こえるかもしれません。

今思い返してみても、この発想に至ったのは僕自身びっくりです。

 

その時の僕は、この新しい彫刻アートを海外のコアなユーザーに販売しようと考えていました。

直前に開発していた海外のクラウドファンディングが成功し、

 

新しい試みを試すなら海外しかない!

 

という思い込みがあったんだと思います。

 

 

僕の家業である義春刃物は、彫刻刀の売上は99%が国内向けです。

海外へは、これまで全くと言っていいほど営業をしてこなかったんです。

 

 

国内でこれだけ売れているんだから、海外にウチの彫刻刀を出したら絶対気に入ってもらえるはず。

 

 

 

クラウドファンディングではSFやゲームなんかが売れてるから、

SFっぽいキャラクターにしよう。

 

 

 

丸い頭は彫る面積も大きいし、デザインも自由に作りやすそうだし。

 

 

うちの会長、社長(父)などが参加する経営会議でそう伝えたら、

全員「う〜ん」

という顔をしていました。

 

でも、当時の僕は自分のアイデアを信じ切っていたため、

 

 

クラウドファンディングで低リスク開発するからこのままやらせてほしい

開発、試作、集客、資金調達は全て自分でやる

 

 

 

と、ゴリ押しで商品化の許可を得ました。

 

 

黒いエイリアンの頭を彫ると、色んな色が出てくるソフビ人形を作って欲しい。

 

そうメーカーさんにお願いをして、何度も何度もやりとりをしながら開発を続けました。

第一次プロトタイプ(型) 目の部分がくり抜かれていてボツになったデザイン

 

エイリアンの頭の形や目の出っ張りも、何度も何度も直してもらいました。

 

 

彫られるソフビ人形の硬さや厚みの最適解

という、

 

ソフビ屋さんでも絶対に知らない(今後も使わない)であろうノウハウの構築

 

 

に粘り強く付き合ってくださったメーカーさんには今でも本当に恩を感じています。

 

 

 

そこからの僕は、ある意味狂気とも呼べるほど開発に没頭しました。

毎日毎日、頭の中はエイリアンのことだらけ

 

 

 

 

特にエイリアンが好きだったわけではないので、

近所のGEO(レンタルDVD店)に行って

 

 

映画のエイリアンプレデターなどを借りて観たりしました。

 

 

 

ソフビ人形は中国の工場で試作されているので、完成まで結構時間がかかります。

 

待ちきれない。

 

実際にソフビのエイリアン人形を彫刻刀で彫ったイメージをどうしても早く知りたい。

 

 

ソフビ人形を手作りすることはとっても大変だということで、3Dでモデリングする勉強も開始。

こんな感じで、粘土をコンピューター上でコネコネして3Dをモデリングできるソフト

zbrushを購入して実際にエイリアンを作って、彫刻する練習をしてみたり。

エイリアンの画像がすぐに見つからなかったので、デザインしたイルカにカメの彫刻をしてみた画像を置いておきます。

 

彫っているイメージを確認したいがために知識ゼロから3Dモデリングを勉強する

 

 

とかいう、ホント超非効率な行動を取っていました。

 

 

 

ただ、本当に寝る間も惜しんでいろいろな実験や勉強をしていましたが、全く辛くなかったです。

むしろ、扱う全ての技術が自分にとって新鮮で、毎日が楽しくてあっという間に1日が過ぎてしまいました。

 

 

そんな日々が過ぎた3ヶ月後のある日、ついに第一号のエイリアン試作が数十体届きました。

 

 

それがこちら。

PVC(ソフビ)素材の色が緑や赤、青など鮮やかな色で、上から黒色などでスプレーをした人形。

 

彫刻刀で彫ることによって、下地の色が出てきます。

初めての試作(当時の写真)

 

到着した最初のエイリアンを彫ったのワクワクは、

それはもう言葉には言い表せないものでした。

 

 

 

彫った部分の艶

彫刻刀の彫り心地

 

どれも期待通り。

 

 

 

この新しいアートを、早くみんなに紹介したい!

 

 

 

そう思い、広報も自分なりに頑張って作りました。

低予算での開発だったため、動画も自分で撮影、編集(これらもゼロから勉強)

SF好きな外国人に世界観を好きになってもらいたかったので、

クラウドソーシング(ネットで仕事を安価に引き受けてもらえる方法)を使って

イメージイラストまで作ってもらいました。

外国人のライターさんにも連絡をとって、エイリアン誕生の物語までこしらえてもらう徹底ぶり。

イラストのラフスケッチ(当時の画像)

デザイナーさんに描いてもらったイラストとストーリーの一部

 

 

このエイリアンの名前は

 

 

SofViCK(ソフビック)

 

そう決めました。

 

Soft Vinyl Carving and Knives (ソフビと彫刻刀)

 

の頭文字達を使った造語です。

 

 

これで素材は揃った。

 

 

 

短い期間でしたが、大急ぎで準備して

キックスターターというクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げました。

 

プロジェクト(予約販売)開始まで、あと2ヶ月。

 

あと2ヶ月で、世界中のSFファンがエイリアンの彫刻[SofViCK]を知ってくれるはず。

 

輝くPVC

 

ちょうどその頃、東京でインターナショナルギフトショーという

国内最大級の見本市がありました。

 

義春刃物も毎年出展。

 

せっかくの機会なので、SofViCKを並べてみることに。

 

僕たち義春刃物のブースは、岐阜県関市の刃物メーカーが団体で出展しているコーナー。

 

 

周りの刃物メーカーさんは包丁やナイフ、ハサミなど、当然ですが刃物を並べています。

そんな実用性抜群のスペースに、謎のエイリアン達が。

 

・・・

 

 

・・・・

 

 

 

違和感しかない。

 

 

 

 

一箇所だけ異質な空間になっていたおかげか、かなりの人に興味を持ってもらえました。

ただ、

 

 

欲しい!

 

 

 

と言ってくれる方はほとんどいません。

 

 

 

 

僕がこんなに楽しんでいたんだから、他の人も楽しいはず

 

 

 

 

こう思い込んでいた僕にとって、この光景が不思議でしょうがありませんでした。

ただ、ここまで一生懸命やってきた思いを否定してしまうのが怖かったんでしょう。

大丈夫。

海外で売れれば大丈夫。

 

こうやって思いながら接客をしていました。

 

 

 

展示会二日目の午後、エイリアン達に興味を持ってくれた方に、

 

 

 

 

このエイリアン達、光ったらいいのに

 

 

 

 

と言われたんです。

 

 

 

 

 

それまで、色のついたソフビを彫ることしか頭になかった僕は、

頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。

 

 

 

エイリアンを光らせるためには・・・

 

透明なソフビ人形を彫ればいいのか。

 

 

 

岐阜に帰ってきてから真っ先に試作してもらったのがこちら。

 

黒いアヒル。

 

 

透明なアヒルに黒色で塗装してもらい、それを彫刻刀で彫ったものです。

 

 

この中にLEDを仕込んで、スイッチをONに。

 

 

 

ひ、、光ったー!!!

 

 

 

 

その輝きは、本当に柔らかいガラスを彫ったかのような

透明感に溢れていました。

 

 

この輝きを見てしまった僕は、量産の注文をする直前だった色付きエイリアンのプロジェクトを中止しました。

 

その代わり、

透明なエイリアン+黒塗装+LEDライト

という新しいSofViCKに方向転換し、もう一度プロジェクトを作り直すことを決断。

 

 

エイリアンの型は完成していたので、透明エイリアンの試作はあっという間に中国から届きました。

 

 

それをたくさん彫刻。

 

 

楽しい。

 

 

彫ったところから鮮やかな色が輝きながら現れる

 

 

こんなすごい素材、どうして今まで誰も彫ってないんだ?

 

 

僕が試作したエイリアンは、既に50体を超えていました。

時間にしておよそ100時間。

 

人間、たくさん彫ると上手になるものですね。

最初の頃とは見違えるほど、彫刻刀の扱いが上手になっていました。

 

 

輝くエイリアンSofViCK(ソフビック)

 

動画も、輝きを強調するようなアングルで試行錯誤しながら撮り直し、

新しくプロジェクトを立ち上げ直しました。

 

この美しさ。この輝きなら。

 

 

海外のみんなはきっとわかってくれるはず。

 

 

 

 

続く

 

 

アカデミー長

田中淳也