みなさんこんにちは!
さて、シャインカーバーさんの中には、「最近彫刻刀の切れ味が落ちてきたな・・・」と感じ始めている方もいるかもしれません。
刃物は消耗品。モノを彫る、という行為は刃先の形状に少しずつ変化をもたらします。シャインカービングシートは柔らかいビニールといえど、いつまでも新品同様の切れ味を保つことはできません。
そんなみなさんのために、今日は
シャインカービング用砥石”Reshine(リシャイン)”について、
その生い立ちや使い方をバッチリご紹介したいと思います。
この記事を読んでいただくことで、
あなたの相棒でもある愛着たっぷりの彫刻刀が新品同様の切れ味に復活する方法
を知ることができます。
それでは、いってみましょう!
彫刻刀と砥石
突然ですが、みなさん彫刻刀を砥いだ事ってありますか?
・・・・
・・・・
無いですよね。
包丁はまだしも、恐らくほとんどの方は彫刻刀なんて砥いだことがないと思います。
彫刻刀職人の僕ですら、機械で仕上げはしますが砥石でガッツリ砥ぐことは滅多にしません。(機械の方がラクなんです。)
そんなマニアックな彫刻刀砥ぎ。砥石の形状も非常にマニアックなんです。
例えば、ネットで入手できるこのような彫刻刀用砥石をご覧ください。
石にいろんな形の溝が付いていますよね。
そうなんです。彫刻刀の様な平らでない刃を砥ぐためには、その形状に合った溝が必要なんです。
例えば、Uの字の形をした”丸刀”では、刃の表面を砥ぐためにUの字の溝が、刃の裏面を砥ぐために逆Uの字の出っ張りが必要です。
しかも、それぞれの刃先形状にピッタリ合っていないと砥ぐ事が出来ないため、自分の持っている彫刻刀の刃にピッタリな凸凹が付いている砥石が必要になってきます。
凸凹のお手入れも必要なので、彫刻刀の砥ぎって結構大変なんです。
シャインカービング彫刻刀はもっと大変?
シャインカービング用彫刻刀の刃先の話をします。
シャインカービング用の三角刀、丸刀は、それぞれ複数の刃付け方法が組み合わされた複雑な形状をしています。
こんな形状にしたのは理由があります。
みんなにビニールシートを美しく、気持ちよく彫ってもらいたい
この想いを実現するために、一から刃先の形状を作り直しました。僕にとっても非常に思い入れのある彫刻刀なんです。
でも、この彫刻刀たち。特殊な形状をしているため普通の砥石で砥いでしまうと普通の彫刻刀に戻ってしまうのです。
なんとか特殊な形状の彫刻刀も砥ぎたい。
その答えを、義春刃物のひとりの職人が見つけてくれました。
消しゴムの発想から生まれた全く新しい砥石”Reshine”
その砥石が、こちら。
チョコレート色の、ただの砥石に見えますよね。
サイズは手のひらにすっぽり収まるミニサイズ。
でも、この砥石には秘密があるんです。
グニャッ。
・・・・・・!!!!!????
曲がった!!!!
そうなんです。この砥石、合成ゴムで出来ているんです。
ゴムに細かい研磨剤を練りこんでいるので、普通の砥石と違って曲げる事ができるほど柔らかいんです。
側面はこの様になっています。
全てのカドが違った形をしています。
- 直角(大きい三角刀向け)
- 鋭角(小さい三角刀向け)
- 大きいR(大きい丸刀向け)
- 小さいR(小さい丸刀向け)
これらのカドの形状を活かして、様々なかたちの刃を砥ぐことができます。
リシャインで彫刻刀を砥いでみる
準備
- 砥ぎたい彫刻刀
- Re-Shine
- 拭き取るための柔らかい布や、なければティッシュペーパー
- 金属クロス(シルバークロスなど)
- 油(刃物用手入れ油が理想ですが、なければ食用油でも代用が可能です。)
三角刀の研ぎ
Re-shineを押さえながら手元から奥に向かって一本筋をつけてください。
この時、刃先の進行方向に指があると滑って怪我をすることがありますので、くれぐれも注意してください。刃先から少し外れた部分を持つか、先端を壁に当てて溝を作ってください。
3-4cmぐらいの長さがあれば十分です。
刃表の研ぎ
刃の持ち方は人差し指を刃の部分に添えて、上から柔らかく握ってください。
刃を斜めに傾けて、少し強めに押し当てることで刃先がぴったりフィットしてくれます。
このフォームを保った状態で、5-10回引いてください。
最後の数回は、だんだん力を抜いていき、最後には撫でてあげるくらいの力にしてあげてください。
羽裏のカエリ取りについて
これで、刃の表に新しい刃をつけることができました。ですが、この状態では刃の裏側の先、この部分に削りカスがたくさんくっついている状態です。
(これを専門用語で「刃がえり」と言います。)
目で見えないのでイメージしづらいと思いますので、消しゴムの削りカスが消しゴムにくっついている状態だと思ってください。
削りカスを取ることで、初めて切れ味が復活します。
つまり、刃物を研ぐ、ということは大まかに言えば「刃表の刃付けと羽裏の刃がえり取り」この二つの要素から成り立っています。
カエリ取り
今回の三角刀は直角の形状をしているので、この直角の角を使って刃がえりを取ります。
先ほどと同じように、人差し指を刃先に添えて、上から握ります。
角の部分に押し当てて、10-15回引いてください。
最初は強めに、徐々にゆっくり、優しく引くと効果的です。
拭き取り
研ぎが終わったら、布で刃先を丁寧に拭いてください。その後、切れ味を確認してください。
刃先が滑らず、スーッと長い線が彫れればOKです。シートを回転させながら曲線も彫ってみて、角つかなければ良い切れ味が出ています。
大抵良くなっていると思いますが、もし切れ味に満足できなければもう一度刃の裏側を5回くらい引いてみてください。
研ぎが終了したら、油を染み込ませた布やティッシュで刃先を拭いて完了です。
丸刀の研ぎ
次に丸刀を研いでいきます。
丸刀は三角刀の研ぎより少し難易度が高いですが、丁寧に繰り返せば必ず切れ味は復活します。
まず、丸刀のUの字の溝を作りましょう。3-4cmぐらいの長さが理想です。
あまりに切れ味が悪い彫刻刀だと滑ってしまって真っ直ぐな溝が作れないかもしれません。その場合は何度か繰り返して少しずつ溝を作って一旦とぎ、ある程度切れ味が戻ってから別の場所にもう一度理想的な真っ直ぐの溝を作ってみてください。
次に、刃表を研いでいきます。
握り方や砥石に当てる角度は三角刀と同じです。ただ、丸刀はこのように左右に傾けて引く、という動作を加えることで、満遍なく刃を復活させることができます。
大体5-10回引いてください。最後の数回は、徐々に軽く引くようにしましょう。
これで刃表が完了しました。
次に羽裏についている刃がえりを取ります。丸刀は、丸い角を使います。
三角刀と同じように握り、10-15回ほどひきます。
最後にもう一度だけ溝の方で軽く研いで、完成です。
切れ味の途中確認
丸刀の切れ味チェックは、シャインカービングシートの彫り跡の透明度で確認することができます。
「透き通った透明感」が出ればOKです。
彫った際に、「すりガラス感」がかなり目立つように残っていた場合は研ぎが足りていないので、上記を繰り返してください。
ある程度ツヤツヤな彫り跡になったら仕上げに移ります。
(仕上げは必ずしなければいけない、ということではありませんが、新品同様の切れ味を目指す方は以降の工程もされることをお勧めします。)
クロスを使った仕上げ
市販の金属クロス(シルバークロス)などを、Re-shineに被せます。
丸刀の刃表を、クロス越しにRe-shineで作った溝に押し当てて10回ほど引きます。
その後、クロスをRe-shineの丸角に当てて、同様に刃裏を砥ぎます。
最初は強め、徐々にゆっくり、力を弱めて15回ほど引いてください。
その後、彫り試しをしてみましょう。
彫り跡がキラキラ、ツヤツヤになれば完了です。
切れ味の良い彫刻刀で彫ると作品も心もキラキラに。”砥ぎ”をシャインカービングライフに取り入れよう
切れ味抜群の彫刻刀から生み出される彫り跡は、まさに
ガラス感の塊
と表現するにふさわしい美しさです。
刃の進みもスムーズで、滑ることもないので失敗も減ります。
どんどんと作品が輝きを増す、その光景は、彫り手であるあなたの心もキラキラに癒してくれるでしょう。
砥ぐ、という行為は道具に”蘇り”を与えてあげる行為です。
モノを大切に扱い、あなたの大切な彫刻刀をいつもピカピカにしてあげることで
彫っているあなた自身の心もキラキラ輝きます。
リシャインと金属クロスさえあれば簡単にできるので、
是非あなたの彫刻刀をリシャイン(輝きを蘇らせる) してあげてくださいね。
アカデミー長
田中 淳也
いつもブログを読んでくださってありがとうございます。
アカデミー長の田中淳也です!